深雪(みゆき)

14/26
前へ
/31ページ
次へ
とても大事な物を、手に入れた時のように。 その時まで、私は誰かと恋仲になる事もなかったので、ああ、男の人に抱かれるって、こんなに包まれるようなものなのかと、ぼうっと考えていました。 そんな私に、倫太郎さんは声を震わせて、仰いました。 「深雪。私と一緒になってくれないか?」 私はゆっくりと、顔を上げました。 「本気なんだ。」 それを聞いて、私は倫太郎さんから離れてしまいました。 「深雪?」 「倫太郎さんのお相手は、もっと良い方がいらっしゃいます。」 「父や周りは、僕が説得するから!」 倫太郎さんのお気持ちが、ほんの片時のいたずらではない事は、分かっていたんです。 でも、私が倫太郎さんの嫁として、この家に入るなんて。 それこそ、旦那様や奥様に、申し訳が立たない気がして…… しばらくして、仕事があるからと言って、私は部屋を出ました。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加