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とても大事な物を、手に入れた時のように。
その時まで、私は誰かと恋仲になる事もなかったので、ああ、男の人に抱かれるって、こんなに包まれるようなものなのかと、ぼうっと考えていました。
そんな私に、倫太郎さんは声を震わせて、仰いました。
「深雪。私と一緒になってくれないか?」
私はゆっくりと、顔を上げました。
「本気なんだ。」
それを聞いて、私は倫太郎さんから離れてしまいました。
「深雪?」
「倫太郎さんのお相手は、もっと良い方がいらっしゃいます。」
「父や周りは、僕が説得するから!」
倫太郎さんのお気持ちが、ほんの片時のいたずらではない事は、分かっていたんです。
でも、私が倫太郎さんの嫁として、この家に入るなんて。
それこそ、旦那様や奥様に、申し訳が立たない気がして……
しばらくして、仕事があるからと言って、私は部屋を出ました。
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