3人が本棚に入れています
本棚に追加
私は椅子に座ると、それを一気に飲み干す。
「ああ、生き返る。」
「そりゃあ、そうだろうよ。こんな暑い日に、のこのこ外を歩いて。もう爺さんなんだから、あんまり無理はしないでおくれ。」
「そうだな……」
そう言って、遠くを見つめる私を見て、女将は言った。
「なんか、あったのかい?爺さん。」
「ん?ああ…」
私はそこで、この店にやってきた理由を、話し始めた。
「女将は、そこの会社の社長を、知っているかい?」
「あの大きな建物のかい?あの会社を知らない人なんて、この町にはいないよ。なんたって、みんなあの会社の、世話になってるんだから。」
女将はそう言うと、私の向かいの席に座った。
「ああ、それでね。そこの社長さんなんだがね。つい先日に、亡くなられたんだよ。」
「ええ!冗談だろう?あそこの社長は、まだ50歳前じゃないか。」
同じ年代の、しかも金持ちの社長が亡くなった事に、女将はひどく驚いているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!