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仕事に集中しよう。
そう自分に、言い聞かせたつもりなのに、紳太郎様の部屋の前に来ると、急に立ち止まってしまいました。
正直あんな事があった後ですから、合わせる顔がなかったんだと思います。
そんな私の気持ちを、吹き飛ばしてくれたのは、誰でもない紳太郎様でした。
「深雪。」
スーッと戸が開いて、そこにあったのは、何一つ変わらない紳太郎様の笑顔でした。
「早く火を熾(オコ)してくれよ。寒い、寒い。」
凍えた振りをして、紳太郎様は、私を部屋の中へ誘ってくれました。
「え、ええ…」
紳太郎様の優しさに甘えるように、私はお部屋に入りました。
慣れた手つきで火を熾(オコ)すと、私は直ぐに部屋を出ようとしました。
「深雪、暖まって行きなよ。」
紳太郎様は無邪気な笑顔で、簡単に私を引き留めてしまうんです。
「そうさせて頂きたいんですが、まだ仕事が残っていて……」
「少しくらいならいいだろう?」
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