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泣きそうな気持ちを抑えて、私は少し離れた場所に、腰を下ろしました。
「では、お言葉に甘えさせてもらいますね。」
少しでも顔を合わせないように。
無意識に斜めに座っていましたね。
そんな私を紳太郎様は、気遣ってくれたのでしょうか。
「深雪、もっとこちらに来たら?」
「……はい。」
そっと私が、両手を火鉢の上にやると、紳太郎様の手が、私の両手をぎゅっと握りました。
驚いて手を引っ込め、目を丸くして、紳太郎様を見ました。
「ごめん、ごめん。びっくりしたよな。」
それなのに、紳太郎様は笑っていて、それが悲しい気持ちを和らげてくれたんです。
「それにしても、深雪の手は冷たい。」
「あっ……そうですね……今日は外が寒いですから。」
すると紳太郎様は、急に私の両手を取って、自分の手で温めてくれたんです。
私は自分の鼓動が、紳太郎様に、伝わらないようにと祈っていました。
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