深雪(みゆき)

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「えっ…何か……変なこと言った?」 私は首を振りました。 「いいえ…嬉しいんです。そう言ってもらえて…」 私がそう言うと、紳太郎様はほっとしたようでした。 「よかったぁ…」 そしてまた、私の好きな笑顔を見せてくれました。 でもその一方で私は、胸が張り裂けそうになるくらいに悲しかったのです。 紳太郎様の心の中に、私はいない。 分かりきっていたはずの事なのに、現実を突きつけられると、胸の痛さに涙がこぼれる。 そして、あれだけ私を想ってくれる人がいるのに、私はその胸に飛び込めない。 これだけ想いは実らないというのに、私には紳太郎様しか考えられない。 私はいっそ、この家を出ようと思いました。 このままでは、想いを寄せる紳太郎様にも、私を想ってくれる倫太郎様にも、申し訳ないと思ったんです。
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