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「紳太郎は?」
旦那様は、紳太郎様にもお聞きになりました。
「僕は、嫌です!!」
紳太郎様ははっきりと、そう仰って下さいました。
「兄さんは、どうしてそんなに、物分かりがいい振りをするんだよ。」
「紳太郎……」
「俺は嫌だ!深雪がいなくなるなんて、絶対に嫌だ!!」
紳太郎様の眼には、涙が溜まっていました。
「だってそうじゃないか。深雪は母さんが亡くなってあと、ずっと俺達の面倒を見てくれたんだ。俺達にとっては、母親みたいなものじゃないか!」
「そんな!…」
私は思わず、大きな声を出してしまいました。
「お二人の母親は、亡くなった奥様だけです。そんなふうに言われると、私は奥様に、申し訳が立ちません。」
「だったら、姉さんだ!」
紳太郎様は続けて、そう叫びました。
「深雪は…俺達の姉弟だよ……家族だよ。」
家族……
そう仰ってくれた紳太郎様の言葉に、胸が震えました。
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