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「そうなんだよ。」
「これからだって言うのに、なんでそんな事に……お嬢さんだってまだ、嫁入り前なのにねえ。」
きれいな奥さんに、そっくりな娘さん。
そう言えばまだ、女学校を卒業したばかりのはずだった。
「ああ、それでね。葬式に顔を出したんだが、そこに男の子を連れた、ご婦人が陰に立っていてね。」
「子供を連れた?しかも男の子?」
女将は難しそうな顔をして、身を乗り出した。
「ああ。中にどうぞとお誘いしたんだが、ここでいいと言って入ろうとしない。あれは察するに……」
「妾かい?」
「よく分かったね、女将。」
「分かるさ。相当、浮世を流したって噂だもの。妾どころか、隠し子がいたっておかしくはないよ。」
社長が亡くなった事は知らなかったクセに、そういう噂は誰よりも知っている。
女将は、不思議だ。
「そんなもんかい?ところが、誰かがそれを奥様に伝えてね。」
「ばかな奴がいたもんだね。それで?」
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