○3歳年下のスパダリ甥に、何でか溺愛されています

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 2001年1月25日 23時58分 東京都台東区  直さん21歳  「本当はね、何もかもが不安で怖くてたまらないんだ。僕みたいな人間が、医者になんてなれる訳がないと思う。少しばかり勉強は出来るかも知れないけど、それだけだよ。他には、何も無い」  「そうなんだ。いや、おかしいなとは思ってたんだよ。家庭教師の先生がちょっと合わなかったくらいで、まさか家出だなんてさ」  「うぅ。それに、家族のみんな弟たちにばかりチヤホヤしててさ。僕なんて、誰も構ってくれやしないんだ」  「蛍くんもだけど、楓くんなんかついこないだ生まれたばかりだもんね。そりゃ、仕方のない部分もあるかな〜。だけど、逆に安心したよ。桜くんも、普通の子供みたいに悩みや不満があるんだね。いっつも、お地蔵さんみたいにニコニコしてるから」  「そんなの、顔に出ないってだけで。僕にだって、不機嫌な時くらいある…」  「そうだよね。人間だもんね。思い出すなぁ。俺も昔、何もかもが気に入らなくって…。何がだったのか、具体的には覚えてないけど。同じように、家出した事があったっけ」  「そうなんだ?みんな、僕と同じなんだ…」  「新幹線のグリーン席に乗って、はるばる東京まで家出する小学生は世界中で君くらいやけどな。ご両親が心配するから、マジで次からはやめようね。そうそう、ご両親と言えば…。沙都子姉ちゃんも俊樹さんも、いっつも君の事を話してるよ。『テストで○点取った』とか、『表彰された』とか」  「…本当?それって」  「マジだよ、大マジ。二人とも君には期待してるし、それ以上に君の事が可愛くて仕方ないんだよ。ねぇ、桜くん。君は、きっと将来お医者様になるんだと思う。だけど、もしそうならなくってもさぁ…。君と言う人間そのものが、否定される訳じゃないじゃん?学歴だとか、年収だとか…。そんなの、クソ食らえだよ。君にはもっと本質を見て、本当にやりたい事を成し遂げて欲しいと思う」  「…よく、分からない。だけど、何だか気分が楽になってきた。ありがとう」  「どういたしまして。桜くんは、やっぱりそうやって笑ってた方が可愛いと思う。これからもお互い、笑いながら行こうよ。何があっても、俺は一緒にいるからさ」  「うん。…ねぇ、叔父さん」  「なぁに?ってか、『直さん』か『お兄さん』だって、いっつも言ってるじゃん」 16add324-8fb7-4105-a6e6-b06507a8a369  「僕もこの先、ずっと直さんと一緒にいるよ。直さんがどんな男に捨てられても、何度仕事を辞めたとしても…。僕が一生、養ってあげるからね」  「さり気なく、人の未来をディスるのやめてもらえませんか!?お、俺の人生だってまだまだこれからなんだからぁ!」
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