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prologue
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Glowing Stars 優城光くんへ
いつも幸せをありがとう。
仕事や子育てに疲れたとき
光くんを見るだけで元気になれます。
でも、無理はしないでね。
ファンの声よりも、自分の心の声に
寄り添ってあげてください。
どんなときでも応援しています。
芙由より
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清水芙由、31歳。
私には、心から応援している推しがいる。
「……よし、録画おっけー」
Glowing Stars──略してGS。
3年前に突如日本のエンタメ界に現れた超イケメンアイドルグループだ。メンバーはセンターの光くんを始め、泉くん、圭くん、司くん、嵐くんの5人。
GSの人気の所以は、その顔面偏差値の高さにある。一人残らずルックスが良い。
そのうえ、歌・ダンス・お芝居など、あらゆるジャンルでの才能がそれぞれにあり、デビューしてから瞬く間に人気アイドルグループとしての地位を確立した。
事務所はTR事務所といって、こちらも5年ほど前に設立されたばかりの新しい事務所。
なんでも、人気ホストクラブのオーナーが代表取締役を勤めているらしく、「ホストであれ、タレントであれ、人気者になるか否かは一目見れば分かる」と、何かの雑誌で言っていたっけ。
なかでも、私のイチ推し……大好きな推しは……センターの優城光くん。
たまたまテレビのトーク番組を見ていた時、出身地が私の地元だったことを知った。
それがきっかけで、彼に興味を持つようになって、SNSにファンの人たちが載せている写真や動画を見ているうちに、自分もファンになっていた。
彼を好きになってから早3年……私は毎月欠かさず、ファンレターを書いている。
読んでもらえるかなんて分からないけれど。
これまでの人生、芸能人にハマったことなど一度もなかった。
デビュー前の彼らの存在などまったく知らなかったし、普段はそんなにテレビを見る方ではないのだけれど、彼を見た瞬間に、何かビビビと心に来るものがあった。
恋愛と同じで、アイドルとの出会いも縁だなぁと思う。
その頃の私は離婚してシングルマザーになったばかり。
トラブルもあって、心身ともに疲れ切っていた。
そんな中で出会ってしまった優城光というアイドル。その日から彼は私の生きる希望となった。……って、大袈裟か。
でもこれは、決して大袈裟なんかじゃない。アイドルや芸能人にハマったことのない人には分からないかもしれないけれど、毎日彼らの活動を追うことが、確実に生きるエネルギーとなっている。
アイドルってなんて素晴らしいお仕事なんだろう。
光くんの活動を追うごとに、尊敬や感謝の気持ちが募った。
『光、白鳥愛梨とできてるらしい!!』
『う~わ。最悪。見た目で好きにならないとか言ってたくせに、結局顔かよ』
『アイドル失格ー』
『ファンなめんな』
俗にいうところのヲタクというものになってみて、SNSの恐ろしさも知ることになった。先週からSNSでは、ピンキーズという女性アイドルグループの一番人気、白鳥愛梨ちゃんと光くんの熱愛の噂で持ちきりだった。
「……お似合いだと思うけどなぁ」
スマホに向かって、独り言。
光くんと愛梨ちゃん……良いと思うけどなぁ。
きっと同じアイドル同士なら、悩みも相談し合えるんだろうし。
正直、世間のファンたちが熱愛を叩く気持ちが私には分からない。アイドルはアイドル。ファンはファン。応援しているはずなのに、どうして好きな人の悪口が言えるのか……私にはさっぱりだ。
そりゃ、羨ましいなとは思う。
私ももっと若くて、愛梨ちゃんみたいに美人さんだったら、光くんと……なんて妄想したりもする。
推しと恋する世界線───
そんな世界に生まれてみたかったもんだ。
まぁ、現実の私には有り得ない話。
鼻っから生きる世界が違う私には、妬むという発想すら出てこない。
「ママ~?始まったよー!早くー!」
「はーい」
娘の柚に呼ばれて、キッチンから慌ててリビングのソファに腰を下ろす。
「こんばんは~!Glowing Starsでーす!」
念のため録画した歌番組。無事にリアルタイムで見ることができてほっとしたのも束の間……光くんの顔を見て、心がざわざわしてきた。
なんというか、覇気がない。少し瘦せたかな?すごく疲れた顔してる。
熱愛の件でいろいろ言われているからだろうか。
アイドルはアイドル。ファンはファン。
そう思う傍ら、優城光という人間が、私はいつも心配だった。
『アイドルは時として、残酷な仕事』
これも、ヲタクになってみて初めて知ったことのひとつ。私自身、テレビや雑誌でいつも彼らを見ていて、ときどき思うことがあった。本当に実在する人間なのだろうか?と。
まるでアニメのキャラクターかのように、自分の中にそのアイドルの“イメージ像”が出来上がっていく。
それは確実にファンの中での勝手なイメージでしかないにも関わらず、彼らがそのイメージに反した途端に批判の的となる。
………なんと残酷な世界なのだろうか。
ファンとして光くんを追えば追うほどに、彼はちゃんと人間として幸せに生きられているのだろうか?と心配になった。
歌番組が終わると同時に、私はレターセットとペンを手に取った────
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