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1.拾う
その日プテリスはお気に入りのカメラと分厚いアルバムを両手に抱え、荒廃した世界を一人歩いていた。ガスマスクなんていう面倒な物をつけてまで外に出ている理由は一つ。新しい写真を撮るためだ。
「んおっ?なんだ?」
歩いていると、何か固い物を踏んづけた感覚がした。ゴミでも転がっているのかと下を見るとそこには、ボロボロになった人間……によく似たアンドロイドが転がっていた。
「こりゃ結構いいアンドロイドじゃねえか」
ボロボロになってこそいるが、人間の見た目をしているアンドロイドは基本的に高級品だ。おそらく、富裕層によってつくられたのだろう。アンドロイドの体を分解してパーツを売ればそれなりの金になると思うが、どうしたものか。
「……ァ……ア……ジジッ……」
踏まれたことに反応したのか、アンドロイドが目を開けた。ギシギシと関節をきしませながら、プテリスの方へ腕を伸ばしてくる。プテリスは伸ばされた腕をガシリと掴み、アンドロイドに尋ねた。
「あんた名前は?どこのアンドロイドだ」
「……ナマエ、名前……ドコ……所属……データ検索中…………名前、所属、ともに記憶データにありません。記憶データの一部に損傷が見られます」
アンドロイドは淡々とした声で質問に答えた。これだけボロボロなのだ。記憶データが消えていても不思議ではない、プテリスはガシガシと手で頭を掻きむしる。
「あー……んじゃお前、俺のとこくるか?」
今にも壊れそうなアンドロイドを持ち上げる。十代前半の幼い見た目に反して、ずっしりとした重みと金属の冷たい感触がした。
別に、善意でこのアンドロイドを助けたかったわけじゃない。こいつがいればシェルターに入れてもらえるかもしれないという、自分の都合があっただけだ。まあ、後はこの壊れた世界で生きていくのに、隣に誰かがいた方が幾分か生きやすくなる。ただそれだけだった。
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