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「私は幸せですよ!
児童養護施設では、園長先生や施設の方に、とても優しくしていただきました。」
私が少し笑顔で話をすると、母も少し笑顔になって頷いていた。
「このお店に、また来てもいいですか?」
恐る恐る私が言葉をかけると母が、
「こんなお店で良ければ、いつでもいらしてください。」
と笑顔で答えてくれた。
その後私が児童養護施設のことや仕事のことを話すと、母は嬉しそうに私の話を聞いてくれているようだった。
母は私を身ごもっていた頃は父と一緒に生活していたけれど、父はろくに仕事をせずにお酒におぼれていたため、母はそんな父を見限って私を連れて家を出たようだ。
その後母は父と話し合いをして正式に離婚したけれど、経済的に苦しい母は私を父に預けるより児童養護施設に預けたほうが私は幸せになれるだろうと判断した。
そして、ある日の夜私を児童養護施設の玄関に置き去りにしたとの話だった。
私は母の話は本当のことだろうと思って信じることにした。
私は母とのこの時間が、もっと続けばいいと思っていた。
時間はあっという間に過ぎて23時を過ぎた頃、終電間近の私はお店を出ることにした。
会計してお店を出るとき、母と杏夏さんがお店の玄関を出て、私を見送ってくれた。
「また来ます。」
私が言葉をかけると母が、
「いつでもまた来てくださいね!」
と笑顔で声をかけてくれた。
私は手を振ってその場を後にした。
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