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──ヤバい、遅刻だ!……えっ!?
突然けたたましく警告を鳴らした意識に、飛び起きたのは午前二時。
壁の時計は慌てる様子もなく「どうしたの?」とでも言いたそうに平たい顔してコチコチ動いている。
おお、そうじゃった。なんか今日は疲れたおいどんは、仕事から帰ってスーツのままネクタイだけはずしてベッドに座ったら、うっかりそのまま寝てしまいましたとさ。めでたしめでたし。
坊や良い子だねんねしな。
つい数時間前のストーリーを復元する作業は、飛び起きた一瞬で終わる。本当は怖くなかった昔話に安堵する。
でも飛び起きた鼓動は、めでたしめでたしではおさまらない。別に会社に遅刻したって、僕の物語が終わる訳でもないのに。
こんなに危機感を覚えるのは、生活の大部分を面倒な仕事が占めているからかも。
転職しようかなと常に考えてるくせに、同時に僕がいなけりゃダメだとも思ってる。
まあね、きっとどんな仕事に就いても面倒臭いはずだよ。
爽やかな朝というものを迎えたとしたら、仕事に行くよりそのまま羽を伸ばしたり広げたりしたくなるはずだよ。
まあ、とりあえず良かった。
遅刻して怒られる僕はいなかったんだ。
安心して煙草を吸おうと胸のポケットを探る右手。しかし煙草はそこにはない。
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