追憶スケッチ

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 ──シャッ、シャッ。  紙の上を走る鉛筆の音。それが私にとっての子守唄だった。 「うぅ〜」 「……おはよう、彩花(あやか)」  その音は口数の少ない父の声よりも、よく聞いた音だったかもしれない。 「おとうさん、なにかいてるの?」  私が父の持つスケッチブックを覗き込むと、涎を垂らしながら寝ている自分の姿が描かれていた。 「もう、かってにかかないでよ!」 「ごめん、でも気持ちよさそうだったから」 「だったらわたしも、おとうさんをかく!」  そう言って私は父のスケッチブックを奪うと、クレヨンを片手に父の顔を描き始める。  これが数少ない父との最後の思い出だった。
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