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これが夢なら覚めないで
高校生・幼馴染・美形×平凡
「凛音、俺と付き合ってくれ」
「樋口、俺にしろ」
ずっと好きだった幼馴染の真永と、クラスメイトの藤本に迫られた凛音は…。
【こんなの夢に決まってる】の続きです。
*****
気まずい…。
真永の隣を歩いているけど、なんだか全然違う人の隣を歩いているみたいだ。
あのあと、藤本は『今日のところは引いてやる』って笑って教室を出て行った。
引いてやるって言われても…しかも今日のところはって…。
俺と真永は無言で帰り支度をして学校を出て、全然会話がないまま自宅最寄り駅まで着いてしまった。
「…凛音」
「なっ、に…?」
真剣な顔で急に呼びかけられて声が裏返ってしまう。
それでも真永は表情を崩さない。
「俺、本気だから」
「……」
本気…。
「明日絵里と別れるから、そしたらきちんと告白させて」
「……」
「じゃ」
俺の家の前で真永と別れる。
俺はなにも言えなかった。
真永の家は俺の家から歩いて三分のところにある。
とは言っても背が高くて足の長い真永が歩くと一分で自宅に着く。
今の俺が歩いたら五分以上かかりそうだ。
俺と一緒に歩く時、真永はそんなに早足で歩く事はない。
そういう細かい優しさのひとつひとつにどきどきする俺に真永は気付いていない。
真永の背中をぼんやり見送ってから家に入る。
真永は俺の気持ちを知らないはずなのに。
それなのに。
『俺、本気だから』
今の状況は真永も藤本も俺の答え待ち。
こんな俺みたいなのの答え待ち…。
浮かれるよりもネガティブが先行する。
俺みたいなのが真永や藤本みたいな人気者にあんな風に言われるとかだめだろ。
なにかの冗談?
あ、罰ゲームとか?
あり得…ないか。
ふたりともそういうタイプじゃない……やっぱり本気、なんだ。
着替えてベッドに横になる。
全然頭が整理できない。
ふたりに迫られた事にびっくりし過ぎて忘れていたけど、俺、藤本とキスしたんだ…。
しかもそれを真永に見られてる。
真永のあんなに怒ったところを見たのは初めてだ。
俺の事で怒ってくれた事に胸が高鳴る。
同時に苦しい。
初めてのキスなのに、好きじゃない相手とだった。
真永は俺を汚いって、思うかな…。
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