周りにいた厄介な面々【其之壱之弐】

1/2
前へ
/25ページ
次へ

周りにいた厄介な面々【其之壱之弐】

 前職では、雇用主夫人が総務を担当していた。  いつ、何時に出勤してくるか分からない自由人である。  緊急事態なら仕方がないとして、母親を病院に連れて行く云々はあるにしても、ある程度は事前に分かっているやろう。  受電はわたしの担当であるが、この総務担当宛にかかってきた時に不在やと困ることが多い。  用があるからかけてきた相手に、 「只今は不在にしておりますが、本日出勤するかどうかは分かりかねまして、」 なんて、なんぼ生き恥晒してまくってるわたしでも言うの恥ずかしいわ。  この事業所では、一番下っ端が雇用主にコーヒーを出すことになっている。つまり、わたしがその担当者であったが、あまりに理不尽なことが続いたので、 「やってられるか。」 と勝手に止めたんである。  すると事業主夫人は、わたしが用があるから事前に申し出て雇用主より承認を得て取得した有給休暇の日の真っ昼間に、雇用主が朝出勤した際と外出先から戻ってきた際は、わたしがコーヒーを淹れて出すようにとのメールを寄越してきた。  再度書く。  所用があり、前もって雇用主に有給休暇を取得したい旨申し出て、承認を得た上で休んでいる。  事業主夫人にとっては、下っ端が我が旦那にコーヒーを出すことが余程の重大事項らしい。  当然無視。  今更取り入る気もさらさらないし、近い将来ここを離れる心積もりもしている。  来客に出すお茶のためにポットのお湯の保温設定を変えたら、オノレらのコーヒーを淹れるのに沸かし直すのが邪魔臭いからと沸騰状態の設定に戻された。 「それならば、お客様用に小さめの魔法瓶を用意してください。」 と申し出ると、雇用主が熱いままで良いと言うから、と放置された。  食わせて貰っている顧問先をもてなすことより、事業主やワレの都合を優先する上等な連中とは付き合い切れん。  いつか何処かでネタにしようと思うてはいたが、まさかここになるとは、その時は思いもせんかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加