エピローグ

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 §  腫れぼったい(まぶた)を雑に拭って啓二は廊下へ出ていく。すると予想外の光景を視界端に捉えて固まってしまう。 「ンだと!?」  夏樹(ナツキ)に付き添われていた黒部が啓二の前でひれ伏す。 「おねがいじばず真辺ざん」 「ぜんぶ聞いてたのか!?」  すべて察して憤る啓二のズボンに黒部はすがりつき、振り払われても食い下がって涙や鼻水をなすりつけた。 「戦闘チームいれてくだだい!」 「友達のキモチ無にすんのか!」 「あだいを強ぐじでくだだい!」 「ざけんなクソチビ許さねぇ!」  啓二は黒部の襟を引っ掴んで前後に激しく揺さぶり、女子高生にも眼鏡キャラにも容赦しない拳を握り込む。 「あなたに彼女を止められますか?」  真顔の夏樹が飛び込んできて啓二の腰にしがみつく。 「彼女を突っぱねる権利があるというのですか?」 「ンなもんねぇよ俺にあるワケねぇだろうが!!」  黒部の代わりに医院の壁を殴り砕くと啓二は吠えた。 「コイツは同じだ……あん時の……俺なんだッッ!!」  §  T県A市・九十九(つくも)町。  山と海で挟まれた陳腐(ちんぷ)なジオラマ。  町にしては狭く墓場にしては広い。  僅か三千の人口が土地を持て余す。  多くの坂や路地が随所(ずいしょ)に陰を生む。  流動性の欠如によって(よど)む闇には人を喰う牙がある。
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