第1話 俺と結婚するか?(4)★

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第1話 俺と結婚するか?(4)★

「それは――ん、っ!」  言い返そうとした矢先、高山が顎を掴んできて唇を塞がれてしまう。  嫌でも伝わってくる独特の臭いと、甘いような苦いようなケミカルな味。せめてメンソール系の銘柄にしてくれたらいいのにと思うけれど、おそらくは叶わぬ願いだろう。 (やっぱマズ……)  ――今となっては、すっかり慣れ親しんでしまった不味いキス。思うところはあるものの、侑人は目を閉じて抵抗することなく受け入れる。  何だかんだと言っても、気持ちいいものは気持ちいい。セックスに限らず、キスだってそうだ。他との経験がないからどうだか知らないけれど、それにしたってすっかり虜になっているのだと自覚せざるを得ない。 「ん……」  高山に上唇をやんわりと吸われ、唇を重ねたまま左右に擦られる。こちらも同じようにやり返してやれば、後頭部にそっと手を回されて深く口づけられた。  歯列を割って侵入してくる熱い舌先。舌同士を絡ませると、少しだけピリピリとした刺激を感じた。煙草の匂いも味も嫌いだが、この感覚だけは嫌いではない。
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