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「――……」
薄目で見やれば、高山の表情もどこか気持ちよさそうに思えた。
体の相性がいい。きっと互いにそう思っているのだと思う。実際、高山との関係はもう十年ほどになるのだが、一度だって連絡が途絶えたことがない。
(ほんっと、変にハマってる……そろそろ潮時だってのに)
結婚、という二文字が頭をよぎるのは何度目だろう。
このままずるずると関係を続けるわけにはいかない。そうとわかってはいるものの、ままならぬ感情を抱える侑人がいた。
こうして高山とセックスをするのは、性欲処理とストレス発散のため。今日にしたって、相手から連絡がなければ自分から誘うつもりだった。
そう、所詮は都合のいいセフレという関係でしかない。それなのに――などと考えていたら、唐突に薄く開いた瞳とかち合った。
「………………」
高山は「またか」といった顔をしたあと、わざとらしく音を立てて舌に吸い付いてくる。
ムッとした侑人は、負けじと高山の舌を甘噛みしてやった。すると、今度は舌先でくすぐるようにして上顎をなぞられる。
「ん、ふ……っ」
ぞくりとした感覚が背筋を駆け抜け、鼻にかかった声が漏れ出てしまう。
その様子を見て満足したのか、高山の唇がゆっくりと離れていく。二人の間を名残惜しそうに銀糸が伝い、やがてぷつりと途切れた。
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