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「で、何かあったのかよ」
灰皿で煙草の火を揉み消しつつ、高山が尋ねてくる。
「何か、って」
「今さら言い訳とかすんじゃねえぞ。セックスの最中だって考え事してただろ」
はっきりと言われては、誤魔化すこともできない。
侑人は小さく息をつくと、観念したように口を開いた。
「……婚活。今回の相手も駄目だった」
言って、自嘲気味に笑う。
結婚を前提とした相手を探そうと、実はここしばらく結婚相談所に通っていたのだ。が、結果はどれも芳しくない。
「まだやってたのか」高山はやれやれとばかりに肩をすくめる。「俺も人のこと言えた立場じゃないが、お前って本気で結婚したいと思ってんのかよ」
「したいに決まってるだろ。俺だっていい歳なんだし」
「ゲイなのにか?」
間髪をいれずに返され、侑人は言葉に詰まった。何も返せないでいると、高山の深いため息が返ってくる。
「相変わらず猫被ってるみてーだけどな、恋愛ともなると話が変わってくんだろ。無理してるって相手にもわかっちまうもんじゃねえの」
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