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第8話 突然のカミングアウト(6)
「もう俺が守ってやる必要はないわけか」
そこで一旦言葉を区切って、小さく息をつく。
「お前を連れ帰ってきたとき、あの男にも言われたよ。『俺、こいつを手放す気ないんで』だの、『絶対に泣かせない、って初めて会ったときから心に決めてて』だの――」
「えっ、ええ!?」
「でもってよ、『侑人のことは、俺の手で幸せにしてやりたい』とか言うんだぜ? 真顔で言うからクソほどビビったわ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるっての」
「あ、はは……高山さん、結構キザなところあるから。俺でもたまに引くっつーか」
「んなこと言いながら、顔赤くすんなよなあ」
「っ!」
侑人はギクリとした。
本当は顔が熱くてたまらない。はたからしたら歯の浮くような台詞だが、高山の気持ちに嘘偽りがないことはわかっているし、嬉しくもなってしまう。
「……なんかムカつくな。昔の侑人は『兄ちゃん兄ちゃん』って、俺のあとばっかついてきたのに」
「いつの話してんだよ。相当昔だろ、それ」
まったく、ピュアな感情が台無しである。恭介がわざとらしくいじけてみせるので、思わず侑人も呆れ交じりに返した。
ただし言葉とは裏腹に、恭介の表情はどこか吹っ切れたように晴れやかだった。
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