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「まあでも、それを聞いて男も女も関係ないんだと思ったよ。勝手にお前の幸せを決めつけるもんでもない、ってな」
「兄さん……」
恭介が侑人に向ける眼差しは、良くも悪くも昔と変わらない。
高山に対してあれやこれやと言っていたが、悪意のようなものではなく、弟である侑人のことを案じていただけなのだろう。
回り道はしたものの、そのような兄の存在がありがたく、また純粋に誇らしく思えた。
「あ、ありが――」
「可愛い弟のためだもんな! あいつのことは気に食わんが、俺の侑人が幸せならそれでいいっ!」
「………………」
「ありがとう」と口にしようとした矢先、恭介は拳を握ってそんなことを言ってのける。感動的なシーンから一転、侑人は脱力感に襲われるのを感じた。
(でも、兄さんらしいと言えばらしいか)
つい苦笑してしまったが、感謝の気持ちは依然抱いたままだった。
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