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しかし、誰に見られているかもわからない状況で、このまま続けるわけにもいかないだろう。名残惜しさを覚えながらも互いに唇を離し、少しの間ぼんやりと見つめ合う。
先に動いたのは高山だった。頭を掻きつつ手すりに向かいなおすと、気を落ち着かせるかのように紫煙をくゆらせる。
その横顔は、なんとなくいつもの余裕がないように思えた。そっと口から煙草を離し、静かに煙を吐き出したところで口を開く。
「なあ、侑人」
「うん?」
「俺たち、本当に結婚するか?」
ぽつり、とさりげないことのように告げられた言葉。
高山の一言に侑人は息を呑んだ。心臓が大きく跳ね上がり、鼓動が速まるのを感じる。
「高山、さん……?」
二度、三度とプロポーズまがいの言葉を告げられてきたけれど、雰囲気がこれまでとは明らかに違う。
いつだってキザな台詞を平然と言ってのけた高山が、今回ばかりはこちらを見向きもしない。切れ長の目を伏せて厳かに言葉を紡ぎ出す。
「誰よりも愛してる。一生かけてお前のこと幸せにするから――どうか、俺を信じてずっと傍にいてほしい」
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