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第9話 結婚式と、それから…(1)
月日は瞬く間に過ぎていき、およそ一年後。
「本気で、こんな日が来るなんて……っ」
侑人は信じられない思いで頭を抱えた。姿見を見れば純白のタキシードに身を包み、緊張した面持ちの自分がいる。
――今日は結婚式当日。宿泊先のホテル内でメイクアップしてもらい、ちょうど着替えを済ませたところだった。
「おいおい、今さら何言ってるんだ。今日までさんざん準備してきただろ?」
背後から声をかけられてハッとする。
振り返れば、同じくタキシード姿の高山が苦笑を浮かべて立っていた。髪も綺麗にセットされており、普段よりも男前に数段磨きがかかっている。
その姿を見た途端、侑人は心臓が大きく跳ねるのを感じたが、誤魔化すように言葉を返した。
「だ……だって、今になってやっと実感が湧いてきたっていうか。……なあ、高山さん。俺ら本当に結婚するんだな?」
「そんなこと言ったら、昨日も保健局で手続きしてきただろうが。あとは式さえ挙げれば、もうこっちじゃ婚姻してるって認められるんだぞ?」
「!」
そう、現在二人がいるのは米国・ハワイ州。日本の同性婚制度を待たずとも、配偶者として生きていきたい――と、二人は海外でのリーガルウェディングを選択したのだった。
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