第9話 結婚式と、それから…(2)

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第9話 結婚式と、それから…(2)

「侑人おぉ~!」  侑人の兄である恭介が駆け寄ってきて、勢いよくハグしてきた。その瞳には涙が滲んでいる。 「あーもう泣いてんのかよ。まだ早いって」 「だって、俺の可愛い弟が婿入りするんだぞ!? 笑顔で送り出したいのは山々だが、寂しくて寂しくて……うう、タキシード姿なんて見たら込み上げてくるものがっ!」 「ったく。仕方ないなあ、兄さんは……」  呆れつつも、侑人は背中をぽんぽんと叩いてやる。  恭介の背後には両親の姿があって、目が合うなり微笑みを交わした。当初は息子のカミングアウトに動揺していたようだったが、すぐにあたたかい言葉で受け入れてくれたときのことは記憶に新しい。  父と母、そして高山の親族とも会話を交わして、チャペル内に足を踏み入れる。  真っ先に視界に入ったのは真っ赤なバージンロード。そしてその先、祭壇奥の壮大なステンドグラスだった。ちょうど太陽光が差し込み、辺り一帯を幻想的な雰囲気に彩るそれは、まさに圧巻の一言に尽きる。  ほどなくして牧師とのリハーサルを執り行い、挙式の段取りを確認すれば――いよいよそのときだ。  スタッフの合図を受けて、あらためてチャペルへと入場する。
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