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侑人は軽く体を起こすと、そっと高山の左手を取った。愛おしげに頬擦りしたのち、薬指にちゅっと口づける。
「ずっと、一緒にいよう――健二さん」
初めて下の名前で呼び、「愛してる」と続けた。
と、そのとき。不意に腕が伸びてきて、あっという間に抱きすくめられてしまった。
「そういった可愛いことは、俺がちゃんと起きてるうちにやれよ」
驚いて顔を上げれば、幸せそうに微笑む高山と目が合うではないか。
「ちょっ、起きてたのかよ!?」
「今起きたんだよ。おはよう」
「お、はよ……」
恥ずかしくなって、布団に潜り込もうとするが阻止される。
高山はこちらへと覆い被さってくるなり、顎に手を添えて上を向かせた。
「名前、初めて呼んでくれたな」
「っ、悪いかよ」
わざわざそこを指摘してくるあたり、やはり意地悪だとしか思えない。唇を尖らせると、高山は小さく笑って首を横に振った。
「いや、嬉しいよ。もう一回呼んでほしいくらいだ」
言って、口元を親指でなぞってくる。
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