第9話 結婚式と、それから…(8)

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「……やだよ」 「なんでだよ? いいだろ、名前で呼ぶくらい」 「恥ずかしいから駄目だって」 「お願いだ、侑人――」  そんな甘い声で囁かれたら断れるはずがない。ずるい男だと思いながらも、結局のところ折れるのはこちらの方だ。 「け……健二さん」  蚊の鳴くような声で呼ぶと、高山は満足げに目を細めた。 「呼び捨てでもいいんだぞ?」 「む、無理。なんか呼びづらい……」 「じゃあ、さん付けでいいからもう一回頼む」 「けん――って、もう呼んでたまるか! 調子乗んなっ!」  顎に添えられた手を振り払い、ぷいっと顔を背ける。  高山は当然のごとくお構いなしだ。くつくつと笑って頭を撫でてくる。 「すまんすまん、嬉しくてつい。まあ、無理して呼ぶ必要もないか――時間はまだまだあるんだからな」 「まだまだ、って」 「ずっと、一緒にいるんだろ?」
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