番外編 寂しがり屋のひとりえっち♡(1)

1/4
前へ
/243ページ
次へ

番外編 寂しがり屋のひとりえっち♡(1)

 二人での共同生活にも慣れてきた頃。  高山が夕食の席で切り出したのは、海外出張の話だった。 「ふうん、このご時世に海外出張なんて大変だな。気を付けていってらっしゃい」 「おいおい、ちょっと冷たくねえか? 最近は角が取れて、すっかり丸くなったと思ってたのによ」 「いや、仕事なのにこれ以上なんと言えと……。ああ、お土産はいらないから。無事に帰ってくれば十分」  同情こそすれど、出張なんてサラリーマンならよくあることだ。これ以上かける言葉がないのだが、高山はなぜか不服そうにしていた。 「ったく、二週間も離れ離れなんだぞ? 寂しくないのかよ?」 「ええっ? たかが二週間程度、子供じゃないんだし」 「俺は寂しいけどなあ」  高山がわざとらしくため息をつき、箸を置いた。テーブルに頬杖をつきつつ、こちらをじっと見つめてくる。 「まだ食ってんだけど」 「今のうちに補充しとかないと、だろ?」 「いい歳して大袈裟な……」  正直、なにを言っているのかと呆れてしまう。  いちいち寂しがるほど子供でもないし、海外とはいえ二週間程度ならあっという間だろう。  そう軽く捉えていたのだが――のちに侑人は身をもって、その言葉の意味を知ることとなるのだった。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1570人が本棚に入れています
本棚に追加