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番外編 寂しがり屋のひとりえっち♡(1)
二人での共同生活にも慣れてきた頃。
高山が夕食の席で切り出したのは、海外出張の話だった。
「ふうん、このご時世に海外出張なんて大変だな。気を付けていってらっしゃい」
「おいおい、ちょっと冷たくねえか? 最近は角が取れて、すっかり丸くなったと思ってたのによ」
「いや、仕事なのにこれ以上なんと言えと……。ああ、お土産はいらないから。無事に帰ってくれば十分」
同情こそすれど、出張なんてサラリーマンならよくあることだ。これ以上かける言葉がないのだが、高山はなぜか不服そうにしていた。
「ったく、二週間も離れ離れなんだぞ? 寂しくないのかよ?」
「ええっ? たかが二週間程度、子供じゃないんだし」
「俺は寂しいけどなあ」
高山がわざとらしくため息をつき、箸を置いた。テーブルに頬杖をつきつつ、こちらをじっと見つめてくる。
「まだ食ってんだけど」
「今のうちに補充しとかないと、だろ?」
「いい歳して大袈裟な……」
正直、なにを言っているのかと呆れてしまう。
いちいち寂しがるほど子供でもないし、海外とはいえ二週間程度ならあっという間だろう。
そう軽く捉えていたのだが――のちに侑人は身をもって、その言葉の意味を知ることとなるのだった。
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