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そう、今日は待ちに待った日だった。二週間もの海外出張を終えて、高山がこの家に帰ってくるのだ。
侑人はソファーに腰掛け、そわそわと落ち着かない心地で時計を見たり、意味もなくスマートフォンを確認したりした。
時刻は夜の十時を回ったところ。すでに飛行機は発着しているはずだが、まだ連絡はない。こちらからメッセージの一つでも入れようかとも思ったけれど、なんだか催促しているようで気が引けてしまう。
と、思い悩んでいたそのときだった。高山から通話がかかってきたのは。
「も、もしもしっ――高山さん、こっち戻ってきたの?」
食い気味に出れば、通話越しに苦笑する気配がした。
『出るの早いな。待ちきれなかったのか?』
「なっ!」
図星を突かれて言葉に詰まる。かたや、高山は疲れを感じさせるような声色で続けた。
『けど悪い。しばらく前に帰国したんだが、ちょっと仕事が立て込んでてな……今日は帰れそうにない』
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