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「思えば、甘い新婚生活なんてのもなかったしさ。金銭のこと、家事のこと……あれこれ言い合いだってしたし」
「あったあった。けど、人と深く関わるってそんなもんだろ」
「だよな」侑人は素直に頷く。「それにさ、俺はなんだかんだ嬉しかったよ」
すると、きょとんとした表情が返ってきた。
そんな高山の肩にそっと頭を預ける。そして、心からの言葉を静かに紡いだ。
「そういったたび、健二さんと一歩ずつ――ちゃんとした〝家族〟になる気がしてさ」
もとはと言えば他人なのだから、ときには衝突することだって当然ある。けれど、こうして二人でいるということは、そういうことなのだと思う。
互いを理解し合い、尊重し、支え合う。そうやって少しずつ〝家族〟になっていく。誰かを愛すること、ともに生きることの意味を――ほかでもない高山が教えてくれた。
「だから、これからもよろしく」
そのような言葉とともに笑顔を向ければ、高山は面食らったように瞬きを数度繰り返した。ややあって、同じように穏やかな笑みを返してくる。
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