僕が動物に近づけない理由

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 でも、ハムスターとは言わなかったんだ。だから大丈夫、と思ってヒミコ先生を見たら、先生はにっこり笑っていた。ほら、やっぱり大丈夫。そう、大丈夫。  なのに、なんで、みんなシーンとしたのか、僕はわからなかった。  その日の夜、僕は夢を見た  きっと、罪悪感からだったのかな。  まず、保育園に登園していた。そして保育園の教室に入ったら、いつも騒がしくてにぎやかな教室には誰もいなかったんだ。僕は、実はもう降園時間でみんな帰っちゃったんだと思って僕のロッカーに荷物を取りにいこうと中を覗き込んだんだけどね、そしたら、先生が見せてくれたハムスターが入っていたんだ。先生が間違えてここにいれちゃったのかな、て思った僕はすぐに先生に返そうとハムスターに手を伸ばした。  そしたら、ハムスターが動いたんだ。  いや、喋った、ていった方がいいかな。  ぱかっと口を開いて、とがった前歯を二本見せながら、言ったんだ。 「しゃべったな!」 「秘密を守ると言ったのに!」 「うそつき!うそつき!」 「嘘をついた子の尻尾はすべて俺のものだ!」  勢いよく言われて、指をかじられそうになった僕は泣き叫んだ。あの時のことは今思い出しても指がちゃんとあるか思わず確認しちゃうほど、怖かったな。から、僕は指をさするのが癖なんだ。大人の僕でもこうだから、幼かった僕の取り乱しっぷりは凄かったらしいよ。目が覚めた僕は目の前にいた母に抱き着いて泣いていた。どうやら僕は10分前から寝ながら泣いていたらしくて、母は泣き止ませるためにずっとだっこしてくれていたらしい。  母の腕の中でいっぱい泣いたら僕は落ち着いて、もう一度寝た。  そのせいで次の朝保育園に遅刻しちゃったけど、僕はひとしきり泣いたことですっきりしていた。  ロッカーを覗くまではちょっと怖かったけど、母と一緒に覗いたら何もなかったから、本当によかった。  それに、よくよく考えたら、「尻尾は俺のものだ!」とか言われたけど、僕には尻尾なんかない。  だからそんなに気にしなくていいよね、と思ったんだ。  でも、その考えは甘かった。  翌年、小学生になった僕はウサギ小屋の飼育係になったんだ。動物が好きだった僕は嬉しくてさ、ちょっと匂いのする小屋でも喜んで掃除した。糞の後片付けをしたらいっぱいウサギをなでようと思っていた……んだけどさ。
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