最終章 最後の指輪

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結局エリちゃんに私の恋愛嗜好を語ることはなかったけれど、それでよかったかもしれない。 エリちゃんも美佳さんも『郁美に負けていられない!』と其々の恋愛を頑張っているみたいで、いつの間にか私がふたりの恋愛の相談や話を訊く側になっていたのだった。 そして私と光輔さんのことを心配してくれた三好さんとは光輔さん絡みのことでよく話すようになった。 会って話す度に『あいつ、誰彼構わず藤澤さんの話ばかりするからかなりウザい奴になったよ』なんて苦情があったりして、申し訳ないなと思いつつもそんな愚痴も嬉しいなと思ってしまうのだった。 そしてもうひとり── 「藤澤、今晩付き合え」 休憩室で休憩していると同じく休憩中の係長に突然そういわれた。 「あの……係長。毎度毎度同じような誘い文句をいうの、止めてくれませんか」 「おまえが誘いに乗ればいうのを止めるよ」 「すみません。今夜も約束が」 「仕事の事で話があるっていってもか」 「だったら尚更、業務中にいってください。それならいくらでも誘いを受けますから」 「──チッ、ガードが堅いな」 「は? なんですか」 「なんでもない」 「?」 光輔さんと付き合い始めてから係長の様子が少し変わったかなと思うのは私の気のせいだろうか。
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