第一章 私という女

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入社してから行われた研修期間で仲良くなった同僚の島田(しまだ)エリ子は歴史好きの少し古風な感じの女性。 その癖サバサバとしていて、明るい性格は研修メンバー内の潤滑油的な位置にあって、人見知りしがちな私にとっても最初から気が合った唯一の人で、今では私を友だちだといってくれる貴重な存在だ。 社会人になってから初めて出来た友だち。その人を私は大切にしたいと思った。だからこそ私の恋愛嗜好を語るのが憚れた。本当の事を話して呆れられたり、嫌悪感を持たれるのが怖いから。 (……で、なんでこんな話になったんだっけ) 私にとっては昼休憩中の社食で話すにはディープ過ぎる内容。 (そっか、エリちゃんが合コンするからって誘われて、彼氏いるのって話になって……か) 日替わりランチの鯖の味噌煮に箸を入れながらこの場面をどう切り抜けようかと考えあぐねていた。 思慮する時間もないことからとりあえず差しさわりのない流れにもって行こうとした。
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