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第一章 私という女
私は恋をしない。
ううん、恋はする。
するけれど、その恋が実ることはありえない。
恋をしても片想いで終わる恋しか私は出来ないのだ──。
**********
「本当に郁美っておかしな女だね」
「何、いきなり」
「だってそんだけ器量良しなら男なんて選り取り見取りじゃない」
「器量良しって……エリちゃん、その言い方、古くない?」
「そこ突っかからなくていいから。で、なんで22にもなって一度も付き合ったことがないの?」
「あ……そこ、やっぱり気になるんだ」
「なるよ。これから友だちとして付き合って行くからには郁美の事、ちゃんと知りたい。だから洗い浚い吐いてもらいましょうか」
「ふふっ。やっぱりエリちゃんって時代劇の人って感じ」
「わたしの事はいいから、さぁ!」
「……」
私は藤澤郁美。この春大学を卒業し、レンタルモップで有名な大手清掃会社の事務職に就職してから三か月ほどが経っていた。
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