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「ううん。一応両親もこの家に住んでるってことになってるよ」
「……一応?」
楠はレジ袋の中から数種類のゼリーを出して続ける。
「俺の両親、動物病院で働いてて。動物が大好きで、人間より好きで。だから病院で飼ってる……保護犬とか放っておけなくて。ほぼ病院で寝泊まりしてるから」
動物病院……そうか、だからベガのことも……
「人間の息子放っておいて犬猫助けてるって不思議だよな。まあ俺も動物は嫌いじゃないし、むしろ好きだから別に良いんだけどな」
「…………」
「……あ、かいちょーゼリー飲料ならいける?1個あった」
「……なるほどね」
「……?ぶどう味嫌い?」
今まで、”校長の孫”としか見てきてなかったけど、そうか。ご両親に放置されて……ずっと一人で……
六花は楠の頭に視線をやると、ふっと笑った。
「ん?ん?」
「ふふっ」
「何だよ。言っとくけどおかゆとかは作れないからな」
やっぱりまだまだ15歳なんておこちゃまね。
「私、桃が大好きなんだけど、桃のゼリーはないの?」
「桃!あるある!買ったはず!!」
壁には一度も着たことがないであろう皺ひとつないブレザーがかかっている。
ネクタイも、ちゃんとかかっている。
「あった!!ほらこれ!桃!!」
私が作った補習表もマグネットで止められていて、終わった日付には斜線が引いてある。
「ふふ。ありがとう」
案外、悪い奴ではないかもしれない。と、思った。
「おう!他のも全部食べていいからな!」
コンビニの袋にパンパンに詰められたゼリー類。
「そんなには食べられないな…………」
ん? 何か大事なことを忘れている気が……
……チク・タク・チク・タク……
「ああああああああ!!!!!」
生徒会の仕事!!!!!
やばっ!今何時!?19時!?
今から学校行って……ってここから学校まで何分かかるんだ?!?
昼に残したアレもあるし、今日から始まるソレもあるし……
20時に始めたとして、終わるのが23時……帰って0時……?!
嘘でしょ……
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