3話

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「ううん。一応両親もこの家に住んでるってことになってるよ」 「……一応?」  楠はレジ袋の中から数種類のゼリーを出して続ける。 「俺の両親、動物病院で働いてて。動物が大好きで、人間より好きで。だから病院で飼ってる……保護犬とか放っておけなくて。ほぼ病院で寝泊まりしてるから」  動物病院……そうか、だからベガのことも…… 「人間の息子放っておいて犬猫助けてるって不思議だよな。まあ俺も動物は嫌いじゃないし、むしろ好きだから別に良いんだけどな」 「…………」  「……あ、かいちょーゼリー飲料ならいける?1個あった」 「……なるほどね」 「……?ぶどう味嫌い?」  今まで、”校長の孫”としか見てきてなかったけど、そうか。ご両親に放置されて……ずっと一人で……  六花は楠の頭に視線をやると、ふっと笑った。 「ん?ん?」 「ふふっ」 「何だよ。言っとくけどおかゆとかは作れないからな」  やっぱりまだまだ15歳なんておこちゃまね。 「私、桃が大好きなんだけど、桃のゼリーはないの?」 「桃!あるある!買ったはず!!」  壁には一度も着たことがないであろう皺ひとつないブレザーがかかっている。  ネクタイも、ちゃんとかかっている。 「あった!!ほらこれ!桃!!」  私が作った補習表もマグネットで止められていて、終わった日付には斜線が引いてある。 「ふふ。ありがとう」  案外、悪い奴ではないかもしれない。と、思った。 「おう!他のも全部食べていいからな!」  コンビニの袋にパンパンに詰められたゼリー類。 「そんなには食べられないな…………」  ん? 何か大事なことを忘れている気が……  ……チク・タク・チク・タク…… 「ああああああああ!!!!!」  生徒会の仕事!!!!!  やばっ!今何時!?19時!?  今から学校行って……ってここから学校まで何分かかるんだ?!?  昼に残したアレもあるし、今日から始まるソレもあるし……  20時に始めたとして、終わるのが23時……帰って0時……?!  嘘でしょ……
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