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「言っておくけど、今日だけだからね、一緒に行くの」
「分かってるってば!!」
ビビリなのは変わっていない。
新しい環境が苦手な七瀬は、4月になると決まって私の後ろを歩く。
特に今日は新しい学校――高校生になるのだから、そのビビリ具合は容姿に似つかないほどだ。
「そういえばさ」
「何。喋ってないでもうちょっと早く歩いて」
「うぅ……いや、昨日さ、俺見ちゃったんだよ……」
「喋るならくっつかないで」
「入学式では見なかったけど、胸に花付けてたし、絶対あれ同じ新入生だった」
私の話は無視か……?
「なんか校長室みたいなところで、誰かと話している奴がいたんだよ……」
「はあ……」
「金髪で、ピアスもじゃらじゃら付いてて、顔に痣があって……」
金髪? 校則違反じゃんか。
「……あれ、ぜってー不良だよな?!」
キラキラと目を輝かせてこっちを見る七瀬。
「……はあ。知らないわよ。とにかくもう時間ないんだからいい加減自分の足で歩いてってば!!」
ぐいっと七瀬が掴んでいる私の腕を振り払う。
「はぁい……」
全くもう。昨日の入学式が無事に終わったと思えば……
――「じゃあね。七瀬は1-C。ここの2階だから。帰りは一緒に帰れないからね」
「おう! 友達100人作っちゃる!」
私は七瀬を1年校舎の下駄箱まで見送り、やっとこさ生徒会室に向かう。
友達……ね。
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