1話

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「言っておくけど、今日だけだからね、一緒に行くの」 「分かってるってば!!」  ビビリなのは変わっていない。  新しい環境が苦手な七瀬は、4月になると決まって私の後ろを歩く。  特に今日は新しい学校――高校生になるのだから、そのビビリ具合は容姿に似つかないほどだ。 「そういえばさ」 「何。喋ってないでもうちょっと早く歩いて」 「うぅ……いや、昨日さ、俺見ちゃったんだよ……」 「喋るならくっつかないで」 「入学式では見なかったけど、胸に花付けてたし、絶対あれ同じ新入生だった」  私の話は無視か……? 「なんか校長室みたいなところで、誰かと話している奴がいたんだよ……」 「はあ……」 「金髪で、ピアスもじゃらじゃら付いてて、顔に痣があって……」  金髪? 校則違反じゃんか。 「……あれ、ぜってー不良だよな?!」  キラキラと目を輝かせてこっちを見る七瀬。 「……はあ。知らないわよ。とにかくもう時間ないんだからいい加減自分の足で歩いてってば!!」  ぐいっと七瀬が掴んでいる私の腕を振り払う。 「はぁい……」  全くもう。昨日の入学式が無事に終わったと思えば…… ――「じゃあね。七瀬は1-C。ここの2階だから。帰りは一緒に帰れないからね」 「おう! 友達100人作っちゃる!」  私は七瀬を1年校舎の下駄箱まで見送り、やっとこさ生徒会室に向かう。  友達……ね。
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