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奈良 建
奈良 建
共和保険 富山支店勤務 営業職
25歳
面長で頬は骨張り、健康的な黄身がかった肌色、身長は180cm。
学生時代に陸上部長距離走選手だった為、細身でやや筋肉質。
髪の色は黒、ツーブロックで襟足は短く刈り上げられ、緩やかなウェーブを描いている。黒い一文字眉、目は奥二重で瞳は小さくやや冷たい雰囲気だ。鼻筋は通り唇は薄い。
高校卒業後、共和保険株式会社営業部に就職。周囲が大学卒の社員の中、人一倍努力した甲斐もあり上司の信頼も厚くチームリーダーに抜擢された。二年前に入社した満島瑠璃に一目惚れをして告白、然し乍ら付き合い始めたその一ヶ月後に富山支店への赴任が決まった。
現在、会社の独身寮で一人暮らし。
遠距離恋愛になり一年間は足繁く金沢に帰り瑠璃と過ごしたが、そのうち金銭的にも精神的にも余裕が無くなり、自然と足は遠のいた。北陸新幹線で1時間弱、その微妙な距離が自分への甘えにも繋がった。
そんな折、営業部長の交代でチームの改編があった。
「あら、面白い。奈良県」
「奈良県?」
「ならけんって呼んでいい?」
「やめて下さいよ、俺の名前は」
「奈良たける、でしょ。同じチームに配属されたの」
「はぁ」
「佐川 さな、よろしくね。」
奈良は佐川さなと出会った。
四歳年上で大学卒業で入社した機転が効く才女、男性社員に頼ることもなく仕事を機敏にこなす姿は自立した女性を思わせた。
何事にも周囲に頼りがちな瑠璃とは違う魅力を感じ、やがてLINEを交換してメッセージを遣り取りする間柄になった。
交際二年目、数日前の事だ。五月の大型連休最終日に金沢から富山へ戻る北陸新幹線の駅のホームで、瑠璃から「会社のフロアのみんなで食べて」金沢銘菓の田中屋のきんつばを手渡された。それはまるで婚約者か妻からの気遣いのようで、紙袋の重みが気分を萎えさせた。瑠璃は奈良との結婚を望んでいるのかそれを言葉の端々に匂わせた。
「じゃ、またな」
「うん」
自分はまだ誰のものではない、佐川さなと親睦を深める一方で、瑠璃へのLINEの返信は滞りがちになった。
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