口紅

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口紅

 社員食堂で「佐川さなは誰とでも寝るから止めておけ」そう忠告された俺はその言葉を掻き消すように佐川さんを抱いた。 「あ、な、奈良くん」 「なに」 「どうしたの」 「いつもと違う?」 「なんだか・・・違う」  俺はその問いに答える事は無かった。 (誰とでも寝る?俺で無くても良かったのか?)  これは嫉妬なのか虚しさなのか、誰でも良いのか、誰でも、中途半端な恋ならばこの身体は誰でも受け入れるのか。 「あ」  もう俺の心に満島瑠璃の面影は残っていなかった。佐川さなをもっと知りたい、独り占めしたい、それしか無かった。これはもう浮気でも、二股でもない。俺の中で瑠璃との恋は終わった。
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