佐川 さな

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佐川 さな

佐川 さな(さがわさな)    共和保険 富山支店勤務 営業職  29歳 面長で健康的な肌色、化粧はパウダーを叩くだけ、口紅は色付きのニベアリップクリームをひと塗り、身なりを構っている風はない。身長は170cm。 手足は長く、印象を良い意味で裏切る豊満な胸元と引き締まった足首。 常に白いカッターシャツに黒い膝丈タイトスカート、横に細長い縁の薄いシルバーの眼鏡を掛けている。 髪の色は黒、肩までのワンレングスボブヘアー。やや下がり気味の細く黒い眉、目は二重だが瞳は小さく冷たい雰囲気だ。鼻筋は通り唇はぽってりと愛らしい。  父親を早くに亡くし母一人、子ひとりで育った。その母親は腎臓を患い富山大学病院に入院している。現在、会社の独身寮で一人暮らし。    富山大学を卒業後、共和保険株式会社富山支店に入社。生い立ちが影響してか業務を一人で抱え込んでしまう傾向があり、残業時間が長いと上司から注意される事が多い。また、事務職の女性社員からは冷たいと嫌厭され、営業職の男性社員からは生真面目すぎて付き合いにくいと距離を置かれている。    二年前、金沢支店から奈良建という男性社員が異動して来た。一見すると面白い名前だと思った。同じチームで働く事になった佐川さなは一世一代の冗談を口にした。 「ならけんって呼んでいい?」 「俺の名前は」 「奈良たけるでしょ?同じチームに配属されたの」  自然に佐川さなは彼の目の前に手を差し出していた。奈良建は不思議そうな顔をしたが、握手を求められているのだと理解して握り返して来た。ゴツゴツした大きな手、少し冷たかった。 「やだ、意外と大きな手」 「佐川さんは綺麗な手をしていますね」  指輪もネイルもしていない指先を綺麗だと褒めてくれた男性は四歳年下の二十五歳だと言った。少し残念な気持ちになった。 「佐川さん」 「はい?」 「LINE、交換しませんか?」  ただの同僚としての名刺交換みたいなものだろうと思っていたが、一か月後にはLINEメッセージを頻繁に遣り取りするようになった。 「私、会社の独身寮住みなの」 「え、俺も!」 「え!?」  佐川さなの部屋は801号室、奈良の部屋は505号室と偶然にも同じマンションに住んでいた。  やがて同じ会社、同じプロジェクトチーム、同じマンションに住んでいる二人は会社では素知らぬふり、退勤後は互いの部屋を行き来する仲になった。
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