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黒木 洋平
黒木 洋平
共和保険 金沢支店勤務 営業事務総合職係長
35歳
面長で健康的な肌色、身長は185cm。
金沢大学卒業後に入社、父親が金沢支店支店長という事もあり働き辛い。
髪の色は自然な栗色、襟足は短く勤務中はオールバックに撫で付けている。柔らかなアーチの眉、目は二重で瞳は大きく焦茶色。鼻筋は通り薄い唇。甘い面立ちを引き締める為に度数の入っていないフレームレスの眼鏡を使用、スーツは濃グレー、濃紺のネクタイを好んで着用している。
彼女が入社して来たのは二年前の四月。片町の古民家風の居酒屋の二階、春の歓送迎会で挨拶をする桜色したネイルの指先は、その栗色の緩やかな髪の毛を耳へと掻き上げた。その愛らしさに目を奪われた。嬉しい事に着座が隣で、辿々しく日本酒を注いだ彼女の名前は満島瑠璃、瑠璃色の指輪を左の薬指にはめていた。
「その指輪はどうしたの?」
「彼に、もらったんです」
正直、肩を落とした。
それもそうだ、そして自分は三十三歳、彼女からすればおじさんに属するだろう。聞けばその彼とやらは、営業職の奈良だという。奈良建、高校卒業入社だが口も達者で顧客のニーズを掴む事に長けている。
「あぁ、奈良くんね」
「はい」
「あれ、満島くんは入社してまだ一ヶ月も経たないよね?知り合い?」
「この前、告白されました」
「そう」
あぁ、口も達者ならば女性を口説くのもさぞ長けているのだろう。しかも既に指輪を贈る、この用意周到さに空いた口が塞がらなかった。
「支店長」
「なんだ、おまえから話し掛けるなんて珍しいな」
「今度の富山支店への人事異動ですが、営業職の奈良建くんを推薦します」
「あぁ、あの積極的な子ね」
「はい」
「彼なら申し分ないね」
他人の人生を嫉妬心で変えてしまうのも如何なものかと後から悔いたが、二年経過した今も尚、彼女の左の薬指には瑠璃色の指輪が煌めいている。
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