金沢に降る雨

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金沢に降る雨

 天気予報の降水確率は30%、青空の下、真っ赤な傘を持ち歩くのも気が引けた。それに面倒くさかった。ただ確かに湿り気があって、髪の毛が上手くまとまらなくて気分は下降線。 「あーあ」 「何、どうしたの」  昼食は、給料日後という事もあって会社近くの”ひらみぱん”のランチを同僚の寿(ことぶき)と食べた。野菜が山盛り、それだけで胸がいっぱいになった。いや、胸がいっぱいなのには理由がある。 「瑠璃、まだ奈良と連絡、取れてないの?」 「うん」 「LINEは?」 「既読にならない」 「電話は?」 「繋がらない」  寿は何かを口走りそうな顔をしたが思いとどまり、フォークとナイフを握ってポーチドエッグに切り目を入れた。割れ目から流れ出る黄身。だらだらと広がるそれは見ていて何となく気分が悪かった。 「あれじゃない?」 「どれ」 「奈良、携帯電話料金滞納してるんじゃない?」 「あぁ」 「あったじゃん」 「そうだね」 「ね」 「でも、何だか気になるんだよな」  もぐもぐとライ麦パンに挟まった生ハムとチェダーチーズ、ピクルスを前歯で引きちぎりながら意味不明な不快感を飲み込んだ。 「なら、行けば?」 「何処に」 「アホか、行くと言えば富山でしょうが」 「あぁ」 「あぁ、じゃ無いわよ」 「うん」 「まぁ、私も富山支社の知り合いに探りを入れてみるわ」 「なんの?」 「はぁ、つくづくあんたはおめでたいわね!」 「めでたくもないわよ」 「う、わ、き、よ。浮気!」 「浮気ぃ、建はそんな人じゃないよぉ」 「ダメだこりゃ」  そう言いながらも気分は下降線のままだった。 天気予報も下降線、退勤時間には大粒の雨がアスファルトに叩きつけられていた。
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