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瞼の裏が白く光り、鳥の声がうるさいくらいに聞こえる。ゆっくりと目を開けてみると、そこはテントの中だった。
「彰くんおはよう。起きられる?大丈夫?」
俺の気配を察知してか、タイミングよくテントのファスナーが外され、冷風とともに詩織が顔を覗かせた。外は朝日が昇りはじめ、高原をみるみる照らしていく最中だった。
「まだ朝早いし、頭痛いでしょ?もう少し寝てて大丈夫だよ?」
「いや、もう平気。喉乾いた……」
身体を起こした瞬間こそ眩暈に襲われたが、立ち上がってテントの外へ出てしまえばもうすっかり元気だった。
「はい、お水」
マグカップに注いでくれた水がとても美味しい。しみじみと息を吐くと、椅子に腰かけた詩織は嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔に昨夜の失態がじわじわと思い出され、罪悪感で気分が悪くなってくる。
「そうだ彰くん、朝ごはんは目玉焼きとトーストにしようかと思ってね……」
食パンの入った紙袋を抱えている詩織に、俺はカスタマーセンターの社員並みに深々と頭を下げた。
「詩織ごめん!せっかくの初キャンプデートに酔い潰れるとか埃をプレゼントするとか、俺最低!でもわざとじゃないんだ!埋め合わせでもなんでもするから!だから……別れないでくれ!」
情けなく懇願するも、詩織がお笑い番組でも見ているかのように声を上げて笑い出した。
「何言ってるの?面白いよね彰くんって。私、彰くんとここに来られて、とっても楽しいよ?」
昨日の焚火の跡を見ながら、詩織は照れたように頬をゆるめる。
「埃じゃなくって火種。ちゃんと焚火できたし、すごくあったかかった。ありがとうね」
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