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詩織の言葉が目にも胸にも染みた。なんていい子なんだろうか。俺にはもったいないくらいだけど。俺の彼女でいてくれるんなら絶対大事にしよう。そう強く思った。
「そういえば、ポケット大丈夫?私が縫おうか?」
「いいよ。帰ったら自分でやる」
「もしかして、なにか大事なもの入れてた?」
「うん。でも、もういいんだ」
お守りなんてなくても、詩織を大事にしたらいい話なんだから。
「あ、そうそう。さっきね......」
立ち上がった詩織が、自分のコートのポケットに手を入れる。中からでてきたのは……。
「あ」
「これね、テントの後ろに落ちてたんだけど」
(鈴ですから自然とね。贈り主の運命の相手のところへ転がり込むんですよ)
「もしかして彰くんの?」
詩織の手で根付をつままれ揺れている空鈴を、俺はまじまじと見つめた。
「……転がり込んでたか」
外に落ちていたからか、少しだけ汚れてしまっているのだが。これは俺の運命の相手が俺の希望通り、目の前のこの子だってことで間違いないだろうか?
「キレイな鈴だね」
「『雛の空鈴』って言うんだって。この山の神社にあるやつで。詩織に贈りたいと思って、持ってたやつ」
「そうなの?嬉しい!じゃあ遠慮なく私のにしちゃおっと」
取り出された空鈴は、再び詩織のポケットの中へと戻っていった。
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