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詩織(しおり)とは大学のアウトドアサークルで知り合った。あれは俺が2年に進級した直後のこと。新人獲得合戦を繰り広げていた俺たちのサークルテントに、彼女が小走りでやってきたのが出会い。 艶々のロングヘアに可愛らしいワンピース。アウトドア派にはとても見えなかったのだが、これから色々調べて始めてみたいとのことだった。 人懐こい性格でたちまちサークルに溶け込んだ詩織(しおり)は、口下手な俺にも積極的に話しかけてきてくれて明るくて。どうしようもなく恋焦がれるのに時間はかからなかった。 「俺と付き合わない?」 「えっ」 年明け早々、サークル棟の個室でたまたま2人きりになった。少しの沈黙ののち、俺は腹を決めて言葉を発した。断られたらすっぱり諦めようと心に決めて。 「嬉しいです!私、サークルに入ってからずっと先輩に憧れてました!ずっと好きだったので嬉しいです、本当!」 パッと咲いた笑顔、心からの嬉しそうな声。ああよかったと、俺は昇天せんばかりに心の底から満たされた。 そして、順風満帆な日々もまもなく3ヶ月......。 ついに来月、サークル活動とは別に2人きりでキャンプデートをすることになった。今日はその下見だったわけだが、ベテランキャンパーである父さんお気に入りの山間キャンプ場はかなり居心地が良かった。来月は2人でここへ来よう。それで、この空鈴(そらすず)を渡すんだ。 「どうした(あきら)?さっきの神社でいいことでもあったか?」 車に戻って早々、カーナビを操作しながら父さんが笑いかけてくる。 「いやえっと。なんでもない。暑いよな、今日」 ニヤニヤを押さえられなかった俺は、助手席の窓を全開にしてごまかした。
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