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青々とした大空。
森に囲まれた一面の芝生。
雛結神社のある場所からさらに車で坂を登り続けると現れるこの場所は、広さに対して利用客がそこまで多くないのも魅力だ。圧迫感がなくていい。
「彰くん!このテントと椅子、一緒に運んじゃうね」
「いいって俺がやる。詩織はそっちの小物だけ降ろしていって」
5月の快晴とはいえ、山の上は結構寒い。
しっかり着込んで詩織と共に車から荷物を降ろしつつ、俺はダウンのポケットに軽く触れる。ここには先月からずっと、神社で手に入れたあの空鈴が入っている。
これを渡せばきっと俺たちは赤い糸で結ばれて。
……なんて。
自分の浮かれ具合が少し馬鹿っぽくて笑える。
「そうだ彰くん、あっちにテント張ってもいい?さっき受付でもらった地図だと、あのエリアなら夜景が見えるみたいなの」
せっかく住宅地から離れてきたのに夜景?とも思ったが、俺は二つ返事で頷く。詩織がいいならいいのだ。
穴場らしいそこは、テント利用可能エリアなのに他には誰もいなかった。
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