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テントを張ってからキャンプチェアにテーブルなどを一通り並べていると、あっという間に日が落ちた。
街の明かりがキラキラと夜空に負けない煌びやかさを放っているのがよく見える。
「夜景もいいもんだな。山の上まで来たのに住宅地がキレイとか、なんか変だけど」
「いいじゃない?そこから飛び出して、外側から眺めてるんだから」
「そういうものか?」
「地球だって、無意識に生活してるけど宇宙からの衛星写真みるとキレイでしょ?」
それもそうかとぼんやり考えていると、詩織がバーナーを使って湯を沸かし、温かいコーヒーをいれてくれる。
「ありがとう。美味しい」
「お酒ならもっと温まるみたいだけどね」
詩織は遠くにいる他のキャンパー達を見据えて苦笑いした。酒瓶片手に上機嫌な彼らの笑い声が微かに聞こえる。
「いいな、酒であんなに楽しそうで。俺は下戸だからよくわかんないけど」
「私もだよ。そういえば彰くん。もう3年生だし、就職とか考えてる?」
「考えてるけど、たぶん東京の企業かな。でも、それよりまずゼミの課題だけど......」
コーヒーの湯気越しの夜景に目を留めて、急に不安になる。
これから本格的なゼミの発表に就職説明会だって始まってくる。詩織との距離がもしかすると、どんどん離れていくのかもしれない。
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