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第二話
レグルスの懐に入るために、カノープスが手伝うことになった仕事は、それほど複雑なものではなかった。
一人の人間を始末する。たった、それだけのことだ。
「僕が青い服を着たピエロ、標的が赤い服を着たピエロとなって二人で舞台に上がる。そこで、カノープス、君が赤い服を着た方のピエロを撃てばいい。たった、それだけのことだ」
レグルスも笑った。
「その標的というのが些か大物なのだけれど」
「やること自体は、単純ですね。しかし、何故、レグルス様もピエロの格好なんてして、舞台に上がるのですか?」
「標的を引き付けておくためさ」
「それは確かに重要な役回りですけれど……レグルス様本人がなさらずとも、そんなことをやる部下が大勢いそうですが」
レグルスは頬に指をあてて考え込んだ。
「ただ、僕がピエロの格好をしてみたいだけさ」
怪物の考えることというのはさっぱり分からない。とりまきの女に聞いたところによれば、レグルスは、いつもこういう奇行に及ぶらしい。
ともあれ、これで簡単になった。カノープスは、言われたとおりのピエロを撃つふりをして、違う服のピエロを撃てばいいのだ。
作戦の前日、カノープスは、レグルスの反乱分子たちの集まりに呼び出された。
「必ず一撃で成功させろ」
「当然だ。それができるから俺はアンタらに雇われている。そうだろう?」
「頼もしいな。では、そのように」
カノープスは一つの、小型の銃器を支給された。余り大きいものを隠し持っていては、些細な動きの違いが出て、レグルスに感付かれる懸念があるらしかった。成程、確かに、とカノープスも納得した。まぁ、全ての弾丸は、急所に当たれば、小型だろうが大型だろうが効果は同じだ。
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