ただ、好きなだけ

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「春はずっと俺と一緒にいるもんね」 ──それは幼馴染がよく吐く台詞だった。周りは相変わらず仲が良いだカップルみたいだと言いたい放題になる程、自分達の仲は本当に良かったと自覚している。揶揄われる事には慣れていたし、その状況は別にどうだってよかった。ただ、この言葉を本人の口から聞く度に自分は勝手に複雑な気持ちになり、虚しさを覚えていた。同時に思っていた。自分が同性の幼馴染相手に好意を抱いていると知った時、彼はその時も一緒にいてくれるのだろうかと... 「──夢」 懐かしい夢を見ていた気がする。目を開けると其処は見慣れた天井だった。未だボーッとする視界を眺めていた直後、スッと人の影が動き、「春」と何度聞いたか分からない程聞き慣れた優しい男の声が耳に入ってくる。 「(しゅん)、おはよう。朝ご飯出来てるよ」 「──あぁ。ありがとう」 寝起きなのもあり、いつも以上にふてぶてしい態度になってしまった自分に、にこやかな笑顔を浮かべる男は、幼馴染の凛太郎だ。自分の反応を見るなり、室内のカーテンをシャッと開き、空気の入れ替えを始める。外の爽やかな匂いが鼻を擽り、俺は徐に身体を起こし、彼の姿をぼんやりと見た。 太陽の光が当たり、キラキラと輝く茶髪。 色素の薄い瞳、長い睫毛、鼻筋の通った顔。 見るからにイケメンの部類に入る完璧な彼こそ、自分がずっと想いを寄せている男だった。
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