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第31話 スーツの男2
うまくいけば今週中には仮免まで行ける。
これなら夏休みには車で遠出もできそうだ。
帰り道、駅までの道を歩いていると、スマホが鳴った。
美羽からだった。
「もしもし海斗、今どこ?」
「今? もう少ししたら南原の駅」
「すぐに流坂まで来て!」
「何で?」
「いいから、早く! 着いたら電話して! じゃあね!」
何なんだ?
よくわからないけど、暇だったので、家とは逆方向に向かう電車に乗った。
流坂まで来て美羽に電話すると、今度は「福永」という小料理屋まで来いと言われる。
ご飯食べるんならそう誘えばいいのに。
そう思いながら、福永という店を探して、暖簾をくぐった。
学生が来るには少し年齢層が上の店だろうか。
入るとすぐに美羽がオレの腕を引っ張って、席に連れて行った。
メニューを見ようとしたら、
「そんなの見なくていいから!」
と怒られる。
それでは何しに来たのかわからない。
「あれ! 見て!」
美羽が指差した方を見ると、カウンターの席に、学校の正門で見たスーツの男と、隣にはアリスがいた。
何を話しているのかわからないが、アリスが楽しそうに笑いながら、時折男の腕に手を置いたりしているのが見える。
「誰だと思う?」
「わからない」
一臣はあの男のことを父親の仕事関係の人だと言っていたけれど、それがどうしてアリスの知り合いなんだろう?
「お飲物のご注文をお伺いいたします」
ちょうど声をかけられた時、男がアリスの髪の毛にふれた。それをアリスが嬉しそうに笑った。
「オレ行って来る」
「え? 海斗、ちょっと……」
美羽が止めるのを無視して、2人のところに向かった。
「アリス」
声をかけると、アリスと男が同時に振り向いた。
「海斗! 何でいるの?」
アリスが嬉しそうに言った。
「君、鳳林大で確か会ったよね?」
男が続けて話しかけて来る。
それを聞いてアリスが言った。
「お兄ちゃん鳳林大まで来たの?」
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