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第3話 海斗
逃げるようにカフェに入った。
大学の中にカフェがあるなんて、初めて見た時びっくりしたっけ。
ミルクティを一口飲んでようやく落ち着くことができた。
「なんだかモデルさんみたいな人達だよね」
「アリスがそんなことを言うなんて変な感じ。入学式で会った時、アリスは『あっち側の人』だって最初思ったから」
「何で?」
「髪の毛の色とか、目の色とか、てっきり派手な感じの子かと……もちろん、今は違うってわかってるよ!」
「うん……」
母親の血をひく明るい栗色の髪の毛、ヘーゼル色の瞳。
畑や田んぼしかないところに住んでいたわたしは、隣町の高校に入ると、そのせいで女の子達に無視されるようになった。
地毛の証明書だって出してたけど、それでも目立つから生意気だって。
だから高校生活は、あまり……いい思い出がない……
文ちゃんと次の講義の教室へ移動していると、狭い廊下の端で、高梨一臣と楠海斗が数人の女の子に囲まれて、何か話しているところに出くわしてしまった。
そっと横を通リ過ぎようとして、話の内容が聞こえてしまう。
「楠君って、いろんな国に住んでたって本当?」
「何年かおきに数カ国住んでたかな」
「すごーい!」
「いや、すごいのはこっち、一臣の方だから。こいつん家、初めて行った時お城かと思ったし」
「言いすぎだろ?」
「えー行ってみたぁい」
女の子の興味が一臣の方に移った。
それを横目に、海斗がにこにこしながら何か言うのが聞こえた。
「Ca suffit.Fous le camp.」
それで
「えっ?」
と言ってしまい、海斗と目があってしまった。
海斗は少し驚いた顔をしてこっちを見たけれど、わたしは何も言わないで、先を歩く文ちゃんの後を急いで追っかけた。
あの人黒い……
やっぱりあの人たちには近づかないようにしよう。
海斗は言った。顔ではにこにこしていながら。
「うるさいんだよ。あっち行けよ」
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