プロローグのようなもの

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プロローグのようなもの

――失いたくないなら、手に入れなければ良いと思っていた。   人見知りだった私は可愛くて誰とでも仲良くなれる器用さと愛嬌を持った幼馴染の円歌(まどか)のことを小学生の頃からずっと好きだった。いつから好きになったのかは上手く思い出せないけど、たぶん一緒に帰る時間が楽しかったとか、一緒に食べたアイスが美味しかったとか、そんな一緒に過ごす普通の時間が幸せだと思うようになったからだと思う。  ずっと気持ちを伝えられないまま中学生になると、円歌が告白されるようになった。全部断っているようだったけど、漠然と隣にずっといてくれると思っていた私は途端に焦り出した。私も気持ちを伝えた方がいいのかな。誰かのものになる前に。  幼馴染との関係性に悩んでいた頃、バスケ部に入部していた私は後に親友になる晴琉(はる)に出会い、その爽やかな晴れ晴れとした性格だとか、かっこいいプレーに憧れるようになった。晴琉みたいになれたら円歌に気持ちを伝えよう。そう決めた。  晴琉を円歌に紹介して月日が流れ三人で仲良くなって、ようやく私もバスケ部でレギュラーになって自信もついた。さぁ円歌に告白しようと思った矢先、部活の合宿中に晴琉から円歌が好きだと聞かされた。頭が真っ白になった。  どうしようかと思っていたら、晴琉は関係性を壊したくないから今のままが良いと言った。私も同じように思って結局円歌に気持ちを伝えることなく中学校を卒業した。  中学校を卒業しても私と円歌と晴琉と三人とも同じ高校に進学した。このまま仲良く三人で過ごせると思っていた。そこに嵐を巻き起こしたのが入部したバスケ部の先輩、志希先輩だった。  志希先輩は円歌をあっという間に奪い去ってしまった。二人が付き合い始めて私の心はぽっかりと穴が開いたように空っぽで。そんな私を煽る先輩は私のことをどんどん追い詰めていった。最初はなんてひどい先輩なのかと思ったけど、結局先輩に焚きつけられたおかげで、夏休みの花火大会の日に私は円歌に気持ちを伝えることが出来た。  そして――。
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